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考察
本田は言った。
『人間は納得しなければ動かない。納得させるには哲学が必要だ。上に立つ者は、誰が効いても『なるほどそうだ』と納得する哲学を持っていなければ、何万人という社員を引っ張っていくことはできない。』
デール・カーネギー の名著『人を動かす』には『自己の重要感』という概念について、こう書いてある。
ルール違反をした市民に対して、半ば権力を使って威圧的に降伏させようとしてきた警官に、次に会ったとき、素直にこちらから降伏してみた。
『とうとう現行犯でおさえられましたね。わたしが悪いのです。何も言うことはありません。先週、あなたから二度とこういうことがあれば罰金だと注意されたばかりですから。』
すると警官は、
『うん、だがまあ、ついそうやってしまうのは人情だろう。』
などと、穏やかな態度をとったという。それも、すべては彼の自己の重要感が満たされたことに原因があり、彼の自負心を満足させたことで、ことが穏やかになったのだ。
これと似たような経験を私も10年前にしている。飲酒の検問に引っかかってしまい、アルコールチェックをしなければいけなかった。最初は昔の癖で、開き直って、
と突っぱねてしまった。すると警官は、
警官
と、淡々と警官としての責務を果たそうとするモードに突入した。この状況で警官の指示を断ることはできない。反応が出ている以上、任意が認められる状況ではないからだ。その時、瞬時にそれを察知した私は、もう居直って逆らうのはダサいと判断し、
と言った。すると警官は、
警官
と言って、許してくれたのだ。まさに同じような経験をしているということだ。そしてこの警官も、自己の重要感が満たされたのである。このとき私が我を突っぱねて、警官と真っ向勝負を挑もうものなら、警官は国家権力の名に懸けてでも、私を潰そうとしただろう。法律という莫大なバックボーンが彼にはあるからだ。
もちろん、私が罪を素直に認めたこと、アルコールの量が微量だったこと、アルコールが消える時間を純粋に知らなかったこと、いろいろな要因が重なったということもある。だが確かにこの警官は、
(素直に自分の罪を認め、反省をしたことに意義があり、事故を未然に防ぐのが警官の仕事だから、これ以上彼を取り締まる必要はないだろう。)
と、判断してくれたのだ。それまで忌み嫌っていた警官に、人情を感じた瞬間だった。中には腐った警官もいるが、警官であろうがなんであろうが、そんな奴はどこにでもいる。とにかく、自己の重要感を満たすということは、人を動かすということに関して、重要なキーワードであることは、間違いないのだ。
本田宗一郎曰く、それは『納得』である。彼らの自己の重要感を満たし、あるいは心底から納得できるような確固たる哲学を持つ。これがなければ『人間』は動かせない。大抵の場合、それは『大義』である。『真理』であり、『原則』である。間違いなく自分だけが満たされればいい、という私利私欲ではない。
稲盛和夫曰く、
ということなのである。
※これは運営者独自の見解です。一つの参考として解釈し、言葉と向き合い内省し、名言を自分のものにしましょう。
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