俺だ。皆にゃ悪いがな、難しい話を避けて通るってのは『この世に難しい話が存在しない』って言ってんのと同じだ。
『慣習とは反対の道を行け。そうすれば常に物事はうまくいく。』
バイロンじゃねえ。俺だよ。ま、実際にはルソーだがな。人の反応に自分の生き方左右されるような甘ったれじゃねえよ。
なあマルコ。空軍に戻れよ。今なら俺達の力で何とかする。
ファシストになるくらいなら豚の方がマシさ。
わかってねえなフェラーリン。そいつがなぜ『紅の豚(ポルコロッソ)』と呼ばれているかということが。
え?こんなのただの退廃思想、怠惰な豚でいたいから、猥褻物陳列がしたいからじゃないのか?
そいつの『アカ』ってのは『共産主義』ってことだ。何のことはねえ。社会主義や共産主義の象徴である旗の色が『赤』だったからだ。
『ファシストになるくらいなら豚の方がマシさ』って言ってるだろ?ファシストってのはまさに『反共産主義』を唱えた人間の団体だ。『全体主義』とも言われている。
『全体主義』ってのはヒトラーなんかがやろうとしていたあれよ。『全体の為には一人が犠牲になってもいい』ってのがそれさ。
国を統合していって帝国を作る。日独伊三国同盟でイタリア、日本、ドイツがその『全体主義』を主張して戦争を起こした。『帝国主義』とも言うわな。
宮崎駿の著書『風の帰る場所』にはこうある。
『俺は最後のアカになるぞ!って感じで、一匹だけ飛んでる豚になっちゃった』
『~主義』ってのがつくからといって構えることはねえ。ただ単に、世界が平等になればいいって思ってたってことさ。ヒトラーたちの思想を受け入れなかったんだ。
観るべき映画はこの2本だ。
『マルクス・エンゲルス』
『クンドゥン』
マルクスくらい知ってるだろう。この世界に最も影響を与えた哲学者だ。50年続いた『冷戦』の根幹にもあるからな。
だが彼は戦争を希望するような奴じゃなかった。むしろ『世界平等』を訴えたのさ。
『クンドゥン』ってのはダライラマの伝記映画さ。彼は相当な人格者でな。彼に説教をするってなぁアジアじゃ『ブッダに教えを説く』って言うんだ。
その彼もマルクス主義だった。ただ彼はマルクス主義の「平等な分配」の考えに同意しているだけだ。マルコも似たようなものなんだよ。
過激な話じゃねえんだ。ただ単に、
『戦争が嫌いで、平和と平等が好き』
なんだよ。それで時代的にヒトラーなんかが台頭するだろ?『流れに逆らう気概』が必要だった。
『いや、俺はお前たちに逆らう』
ってなもんさ。こいつぁ戦争で大切な仲間を失ったからな。
戦争で皆死んじまって、自分だけ生き永らえた。どうして俺だけ生きてんだって、なんで戦争なんか始めやがったんだって。奴なりに苦しんでな。
豚になった実際は明確にせずとも、そうして自分に罰を与えてんのさ。『俺は生き残ったが、偉いんじゃねえ。』って。むしろ『執着』したんだって。醜くな。
『豚』ってのは宮崎駿にとって縁があってな。ぽにょのエンドロールも、千尋の両親もそうだろ?当時の東大総長がこう言ってたんだ。
『肥えた豚ではなく、痩せたソクラテスになれ』
意味はよ、執着するなとか、甘んじるなとか、思い上がるなって意味でよ。人はすぐ豚になるって。利己に走るんだよ。
喋り過ぎだぜじじい。俺でもある、相棒でもある宮崎駿ってのは、いちいち説明をしないんだ。今まで通り頼むぜ。
俺は俺のためにしか飛ばねえ身勝手な豚さ。
何だか今日は気分がいい。きっとエンジンちゃんもそうだよねっ♪
ささ、金稼ご
・・・
完