スッキリした目覚めの為に効果があるのは?
朝、寝起きがスッキリしないという人はどういう対策をすればスッキリするでしょうか。コーヒーを飲んだり、タバコを吸ったり、朝食を食べたり、シャワーを浴びたり、人それぞれ思いつくことが色々あるでしょう。
寝起きタバコはいいのか
例えばタバコについて、『なぜあなたの疲れはとれないのか』にはこうあります。
タバコはなぜおすすめできないのか?
(省略)タバコの最大の害はタールです。肺がんを起こす原因もほとんどがタールなので、タールがわずかしか出ないというのはタバコを吸う人にとって魅力的です。実際、愛煙家が味わいたいのはニコチンであってタールではなく、それが吸えるのなら電子タバコでも構わないということなのでしょう。ただ、ニコチンは眠気を妨げる作用がありますから、就寝直前の喫煙は控えた方がよいでしょう。
つまり、ニコチンには眠気を妨げる効果があるので、タバコを吸えば『朝の目覚めがスッキリする』…と思っている人が大勢いるでしょう。実際、私の知人のとび職人も、朝起きたらまず最初にタバコを吸うところから始めていました。眠たい顔をしながらタバコを吸っていましたね。一つ気になったのは『眠たい顔をしながら』ということです。
『疲れが確実にとれる「眠り方」のコツ』にはこうあります。
寝る前の一服が快眠を妨げる
(省略)また、タバコを吸うと、血管、とくに抹消の毛細血管が収縮する。これは体温調節機能にとって致命的なトラブルだ。手足の毛細血管は、血液を温めたり、放熱したりするラジエーターの役目を果たす体温調節器官でもある。ここが縮こまってしまうと、深部体温の低下によって眠気を催すシステムがうまく働かない。だから喫煙すると寝つきが悪くなるのだ。
やはりどの専門書を見ても『タバコで眠気が覚める』という方向でまとめられていて、それであれば起き抜けの喫煙はスッキリした目覚めに有効だという見解が頭に浮かびます。しかし問題は次の文です。
喫煙者は経験的にこの作用を知っているから、昼間は『眠気覚ましにタバコを吸う』ことが多い。しかし、ニコチンの中毒症状が強くなると、睡眠中にも定期的に体がニコチンを渇望するので、眠りが浅くなってしまう。ときには数時間ごとに起きて喫煙し、また眠るというツワモノもいる。
ニコチンを吸ってしまうと、体がそれを欲してしまう体質になり、『睡眠の質』が低下するんですね。更にこの部分の詳細を見てみましょう。『脳とカラダの不思議 (にちぶんMOOK)』にはこうあります。
タバコを吸うと落ち着くのは、なぜ?
ニコチンをアセチルコリンと勘違いする脳
タバコを吸うと、気分が落ち着くとか頭がすっきりしてやる気が出る、とよくいわれるが、これはタバコに含まれるニコチンの効能によるものである。ニコチンは、記憶や学習に関係の深い情報伝達物質のアセチルコリンと似かよった分子構造をもっている。そのため、受容体はニコチンをアセチルコリンだと勘違いし、結合させてしまうのだ。ちなみにアセチルコリンは、やる気を出させる物質ともいわれる。
体内で生成されたアセチルコリンは酵素によって分解されるが、ニコチンは分解されないため、受容体に長くとどまり、アセチルコリンよりも強い刺激を脳に与え続ける。これによりドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンなどの働きも活発になっていく。タバコを吸うと頭がスッキリしたように感じるのはこのためだ。しかし、喫煙を続けていると、アセチルコリン受容体の感度は徐々に下がっていく。いきなり禁煙した場合、ニコチンの手助けを失ったアセチルコリンは思うように働けない状態に陥る。これがイライラや集中力低下に繋がるため、なかなか禁煙できないのである。
タバコを吸うとニコチンを摂り入れることになります。そして、ニコチンをアセチルコリンと勘違いした脳が、報酬系物質であるドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンなどを放出します。その報酬系物質のせいで、たしかに一時的には『タバコを吸うとスッキリする』とか、『ストレスを解消できる』と感じるわけです。しかし、 喫煙を続けていると、アセチルコリン受容体の感度は徐々に下がっていくので、アセチルコリンがある種のニコチン依存状態となり、タバコがないとイライラしたり、集中力が保てず、またタバコを吸ってしまうわけです。


これで喫煙中毒が完成するということなんですね。この喫煙中毒はある意味、麻薬中毒と同じです。麻薬を乱用したときも脳内にドーパミン等の報酬系物質が大量に放出されます。乱用者はその多幸感が忘れられず、また何度も麻薬に手を出してしまうんですね。冒頭でいくつかの朝のスッキリ対策を羅列しましたが、冷静に考えればわかるはずですが、『良質な睡眠を取る』こと以上に、翌日の朝にスッキリ目覚められることはあるでしょうか。
つまりこれらの問題において何らかのアイテムに依存する考え方を持ってしまっている人は、まるで『木を見て森を見ず』です。『良質な睡眠を取る』ことなくして、『目覚めのいい朝』などは存在しないということを大前提に覚えておく必要があります。そう考えると、確かに断片的に見ると朝の喫煙は『眠気が覚める』ことになりますが、実際には最重要ポイントである『睡眠の質』の低下を煽る行為をしてしまうことになり、喫煙の習慣自体が、良質な睡眠や起床にとってNGだということなんですね。
- ニコチンには眠気を妨げる効果がある。
- しかしニコチンを吸ってしまうと、体がそれを欲してしまう体質になり、『睡眠の質』が低下する。
- 喫煙中毒はある意味、麻薬中毒と同じ。
良質な睡眠を妨げる要因
さて、しかしそうは言ってもその『良質な睡眠を取る』ということは、なかなか容易でもありません。例えば下記の記事に書いたように、睡眠の質を下げる原因というものは多岐にわたります。
- 老化に伴う様々な現象
- 性ホルモンの影響
- 睡眠に必要な食事と栄養
- 電子機器がメラトニンの分泌を抑えてしまう
- カフェインがアデノシンを一時的にブロック
- 『温度』や『湿度』
- 寝床内環境
- 空気が汚れていると眠りが浅くなる
- 布団と枕を最適化する
- 室内の明かりは『0.3ルクス』に
- 騒音は当然眠りを妨げる
- 異臭がしたら眠れない
- 寝酒としてアルコールを飲酒するのは基本NG
- タバコのニコチンには覚醒作用がある
- 悩みがあったら眠れない
- 『新しい本を真剣に読む』という行為は刺激的
- 入浴にはコツがいる
- 運動するなら控えめに
- 『痛み』があったら眠れない
- 睡眠障害を起こす病気
- 薬のせいで眠れない薬剤性不眠
これだけの問題をすべて最適化しなければ、良質な睡眠を得ることはできません。したがって、記事を見てそれらを最適化するよう意識しましょう。
