名言を自分のものにする

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おそらく20年ぶりだった


テレビを見て涙を流したのは。


『ワンピース』である。


確かにある瞬間から没頭するほどワンピースが好きだ。

この作品は実に奥深く、幾多の感動的場面が存在する。

だが、どんなに感動的な場面でも、涙を流すのはこらえてきた。

それはもちろん、他の全ての感動的な映画や、

人生の場面でも、同じことである。


私は自分の心に嘘がつけない。


『結婚式』だとか、『葬式』だとかいう理由だけでは、

例え肉親のそれでも、涙を流す理由にはならない。


私にとって重要なのは、そういう表面的な理由ではない。

『どれだけ"真剣"で、"覚悟"が感じられるか』

ということだ。


浮ついたありきたりの内容の結婚式や、

大して関わってもいない人間の葬式では、

涙を流せるわけがない。



いうなればそこに私の涙の"ツボ"がある。


だからこそ私は自分の家族や友人の葬式で涙を流すために、

喧嘩をするほど全力で、命をかけるほど真剣に、

向き合っているし、いきたいと思っているのである。


だから悪いが、

私のこの猪突猛進で真実を映し出す鏡のような性格を怖がって、

避けて通るような人間が悲しくもこの世から亡くなっても、

私は涙を流すことはできないだろう。


それは、

今もこの星のどこかで人が亡くなっていても、

あなたが涙一つこぼさないのと同じ理由なのだ。





長い間涙を流さなかった私は、

(ここまできたら本当の本当に泣くべき場面以外ではもう絶対に泣かない)

という、気持ちが固まっていた。



だがそれを今日、打ち破られたのだ。


泣かせたのは、絶対的主人公の『ルフィ』でも、

その兄の、私にそっくりな性格の、『エース』でもなかった。



『あっかマンボウ、ふーりっふーりっ♪』

という愉快な歌で踊る、魚人島の王子の一人、

アカマンボウの魚人、『マンボシ王子』である。




まさかこのキャラクターが、私の20年の封印を打ち溶かすとは、

夢にも思っていなかった。



(こんな歌を歌って。

こりゃただの面白おかしな脇役だな。)


『箸にも棒にも引っかからない』

そう思っていた、私の中での脇役のこのマンボシ王子が、

そうしておどける理由を、"覚悟"を知った時、

固く締め切って支配していたはずの涙を、

こらえることができなかったのだ。



これが『ワンピース』の実力である。

 

 


by:一瀬雄治 (Yuji Ichise)
サルベージエンタープライズ株式会社代表取締役社長。
1983年、東京都生まれ。


おそらく20年ぶりだった

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