名言を自分のものにする

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負の連鎖 正の連鎖


先日負のサイクル、正のサイクルという話をしたが、
今度は"連鎖"についてだ。
ある友人が、出世していき水準を上げていこうとする友人らに対して、
不服そうにこう言った。
『なんでそこまでしてお金が欲しいの?
別に出世なんかしなくても俺は一生居酒屋でいいね。
近場にバーベキュー行ったりさ、
お金なんか無くても十分楽しめるじゃん。』

彼がバリバリ仕事ができて、出世しようと思ったらいつでもできる能力と、
甲斐性があれば耳を傾ける価値はあるが、
いささか彼の生活態度を見ていると、ただの"僻み"にしか聞こえない。
人生いろいろ。
人には事情がある。
人間一度は"グレー"な仕事や、中には"ブラック"の仕事をすることもあるだろう。
彼がその倫理について物申す、正義感溢れた熱血漢なら話は別だが、
彼は"ホワイト"な仕事でも地に足をつけないのだから、
これでは誰も彼の言葉に耳を傾けない。
私だって、ある程度の地位と財産を手にしてからようやく
『お金が全てじゃない』
と、言いたいことを言っているのだ。

彼は中学から一緒だった同級生達が、出世していくことが気に食わなかったようだ。
彼の言ってることがなぜ"負の連鎖"を生むのかというのは、
村上龍の『無趣味のすすめ』を紐解けば、
おのずと理解ってくる。

■「弱い絆」と「強い絆」という二種類の人的ネットワークがある。
「強い絆」のネットワークというのは、家族や恋人や親友、それに職場の仲間など、
ほとんど毎日顔を合わせる人たちだ。
「弱い絆」の関係はさまざまだが、
平均して年に一回から数回会って食事をしたりして、たまにメールをやりとりして、
お互いの無事を確かめ合うという程度の付き合いを言う。
アメリカのNYで行われたある調査では、
低所得者層の人間関係はほとんどすべてが「強い絆」だったらしい。
家族や親しい友人や恋人、それに職場の仲間以外には人間関係がないということだ。
それに比べて先端企業で働くエリートたちは、
「弱い絆」の人間関係を多く持っていたのだそうだ。
「浅い付き合い」の友人たちだ。
プライバシーに立ち入ることはなく、情報をやりとりする。
仕事に有用な人脈という場合、おそらくは「弱い絆」の人間関係ということになるのだろう。

つまり、
彼は、同級生達と『強い絆』で結ばれたかったのだ。

一見すると、何とも情に厚く、人としての真理をまとっているかのように見える。
だからこそ、彼は自分が正しいというようにふるまっていたのだろう。
実際に、彼の考え方に賛同し、彼の水準に合わせた絆で結ばれる者もいるだろう。
だが同時に、
村上龍のいうとおり、その行動は、
"出世する人の足を引っ張る行動"
だということを自覚しなければならない。
"居酒屋"や、"バーベキュー"は、一人では行けない。
友人は、こうは考えられなかったのだろうか。
『俺がいつまでも変わらずに居酒屋に出入りしたりすることが、
どれだけ俺の周りの友人たちに"影響"を与えているだろうか。
確かに俺は満たされている。
でも、こうやって自分が満足したいからといって、友人たちを巻き込んでいいのだろうか。
俺には、"責任"というものはないのだろうか。
もし俺がこの行動をやめ、成長の選択肢を取れば、
友人たちの将来は、もっと明るいものにならないのだろうか。
『あいつも前に進んだ』
として影響を与え、
友人たちの子孫の人生は、もっと可能性に満ち溢れないのだろうか。
いつまでも立ち止まっていたい気持ちは、
ピーターパンシンドローム(大人になりたくない症候群)じゃないんだろうか。
自分の停滞する行動は、
どれだけ俺の周りの友人たちに"影響"を与えているだろうか。』

人生とは、
人それぞれだ。
地球の寿命、爆発から衝突の間のこの100億年の間に、
人間が10兆人生きたとしたら、
10兆通りの"環境"があり、"ドラマ"があり、"理由"があり、
人生がある。
彼の言いたいことは理解るが、
彼は、もっと自分の及ぼす"影響力"について、考えるべきなのだ。
彼の目的は『刹那的』だが、
出世する人の目的は『永劫的』である。
誰もが一度は経験して、卒業する人と依存する人に分かれるが、
変わらぬ居酒屋の飲みの席や、低所得の集いは、
その場にいる人間だけが満たされる時間の使い方だ。
だが、出世とは、"資産"を生む。
資産とは、地位や名誉、財産や事業、そして矜持に、人である。
地位や名誉があれば、そのハロー効果で、たやすく資産を生める。
わかりやすく言えば、"二世"、"親の七光"、ということである。
財産があれば、公私ともに、欲しいものは手に入る。
事業があれば、それは当然資産を生む。
そして、出世とはその過程で人を育てることが必須であり、
その育てた人は、どんな資産よりも有益な資産なのだ。
三流は、お金を遺す。

二流は、事業を遺す。

一流は、人を遺す。

というが、二世も、財産を使う者も、事業を営む者も結局は"人"であり、
"人"がしっかりと育っていなければ、築いた資産も、全て水の泡だ。

だが、
とにかく何流だろうとも、人として、先祖として資産を遺すということは、
人間の使命なのだ。
人は、究極に突き詰めれば、子孫にバトンタッチをして、命をつなぐ為に生きている。


その、最良のバトンタッチとは何か。
そういうことを考えて、人生を生きなければならないのである。
幸いなことに友人も私もまだ20代だ。
まだまだこれからである。
が、
早ければ早い方が、いい。
時間だけは、取り返すことができない、最も貴重な"資産"だからだ。

 

 


by:一瀬雄治 (Yuji Ichise)
サルベージエンタープライズ株式会社代表取締役社長。
1983年、東京都生まれ。


負の連鎖 正の連鎖

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