サイバー・クライム
■著者:ジョセフ・メン
サイバー・クライム(電子犯罪)。トップレベルの機密情報を扱っていた『ウィキリークス』を攻撃したハッカー集団『アノニマス(匿名)』は一躍有名になった。
つい先日、2012年6月に『違法ダウンロード刑事罰化』を可決した、財務省、自民党、JASRACをサイバー攻撃し、サーバーダウンさせたのは記憶に新しすぎるだろう。
かつてブッシュ大統領は、『サイバーテロ』に関する部下の報告を見下していた。
しかし、9.11以降、『もしあのテロが、サイバーテロとして攻撃されていたら、アメリカが受けた被害は、今回とは比べ物にならなかった』との部下の発言に背筋を凍らせ、いよいよ本格的にサイバー・クライムと向き合う覚悟を決めたというのだ。
ロシアや中国では、国家でトップレベルのハッカー集団を運営しているという。国際的な壁という法の網をかいくぐり、やりたい放題に"DDoS攻撃(サーバーダウン攻撃)"をするハッカー集団がもし本気を出したら、甚大な被害が起きる。
映画『サマー・ウォーズ』では、天才的なハッカーの立ち位置に近いカリスマ、『キングカズマ』が活躍したが、実際の世界にも『キングアーサー(King Arthur)』なるハッカーがいて、この世の全ての金の流れを把握していた。
世界最高レベルの技術を持つ彼が本気を出したら、世界は混乱する。キングアーサーの実態は、いまだに掴めていないというのだ。
戦争のようには表面化されないこのサイバー・クライムは、さしずめ『沈黙の戦争』である。
この騒動の根幹を突き止めれば、wwwのインターネットを創り上げたヴィント・サーフが、ここまでの事態を想定していなかったということにある。今、ハッカー達が隙入る間もない新しいインターネットを創り直さない限り、この問題は永遠にイタチごっこだという。
近いうちに、このサイバー・クライムの事実は映画化されてもおかしくない。ノンフィクションでこれだけセンセーショナルな新世界は、それに匹敵すると思うからだ。
はたして人間の進化は、どこまで行くことが許されているのだろうか。